このところ、ずーっと脱線していましたので、今日は元に戻って、『シャーロック・ホームズの思い出(下)』(偕成社版)の収録作品について。
今日、初めてこのブログにお越しいただいた方のために、少し説明をします。(2度目以降の方は、この辺は適当にすっとばして・・・)

私のサイト「こども図書館ドットコム」では、「シャーロック・ホームズ全集」(偕成社版)を紹介しています。
この偕成社版は、一般向けの文章を子どもに読みやすいように、平易な文章にしたシリーズです。中学生以上の方なら、一般向けの本の方をお勧めします。
『シャーロック・ホームズの思い出(下)』は、偕成社版の「シャーロック・ホームズ全集」の8冊目です。ホームズシリーズの2番目の短編集です。
『シャーロック・ホームズの思い出』には、11編が収録されていますが、この偕成社版は、子ども向けなので、ページ数の関係か、上下巻に分冊されています。
この本の表紙画像は、出版社の許可をいただいて、私の本サイトの『シャーロック・ホームズの思い出(下)』の説明ページに掲載しています。

嬉しいことに、この下巻に収録されている作品『まがった男』『入院患者』『ギリシア語通訳』『最後の事件』は、全部ジェレミー・ブレット主演の「シャーロック・ホームズの冒険」シリーズではドラマ化されています。
この下巻に収録されている作品のうち、今日は『まがった男』について。

この『まがった男』は、インドでの過去の事件が絡みます。ホームズの物語は、イギリスがインドを植民地にしていた頃に描かれましたから、しょっちゅう物語にインドが出てきます。この作品は推理小説ではありますが、実は純愛物語と言ってよいかと思います。
長い歳月が過ぎて、全く相手の生死さえ不明でも、心の奥底に存在する強い気持ち。
それがビクトリア朝のイギリスの軍隊や軍人の家庭、インドの風物などを通して描かれます。

それともうひとつ、「因果応報」というか、アガサ・クリスティの『ポワロのクリスマス』に出てきたヨーロッパのことわざ「神のヒキウスはまわるのがのろいが・・・(どんな小さな粒もひきのがさない)」(ハヤカワ・ミステリ文庫 村上啓夫訳)を連想させるもの。
不正な手段で利益を得ようと行動して、その対象物を得ても、人間は良心の呵責に悩まされる、ということを強く感じるストーリーです。
中国の後漢書の故事からという「天知る、地知る、我知る、人知る」ということわざも思い出します。
その相手は死んでしまった(と思われる)し、自分が悪いことをしたのは誰にも知られていないが、自分自身がよく知っている。そしてそれは、いつか露見する、という勧善懲悪の物語でもあると思います。

ジェレミー・ブレット主演でドラマ化された『曲がった男』は、おおむね原作に忠実な作りです。
原作では、事件の半分ほどをホームズがひとりで調べて、後半、ワトスンと行動を共にすることになっているのが、ドラマでは最初からワトスンと一緒、ということや、事件の発端となる出会いが原作では「道で」なのに、ドラマでは「ボランティア会場で」に変更されている位です。
その代わりというか、原作では割合とあっさり描写されていた、ある人物の「罪悪感」については読者により理解しやすいような形で映像化されています。
ドラマで私が気に入っているのは、女中のジェーンのキリッとした性格描写。ホームズの誘導尋問にひっかからずに、てきぱきと芯の通った受け答え。
そして事件が起きたバークレー邸で、暖炉を背に立ったホームズのスタイルの良いこと。独特の右手の人差し指を唇に当てる仕草もかっこいい。
悲劇の現場となった、白い壁のバークレー邸と緑の芝生のコントラストのきれいなこと。
もちろん現場を調べるホームズの様子もこれまたかっこいい。
それから「曲がった男」の受けた仕打ちを知ったときのホームズとワトスンの、驚きと同情と(加害者への)嫌悪が入り混じったような表情。
事件当夜の雷を効果的に使ったシーン。
これはちょっと陳腐では、という意見の方もいるようですが、私には、被害者の恨みをきっちり表現しているようで、なかなか良かったと思えました。
(こちらのサイト221b Baker Street の管理人さんは、このシーンについて『B級ホラー?』と表現されてます。こちらのサイトではネタバレがありますので、参照の場合はそのつもりで。)
ラストには、原作をちょっとひねって、「くすっ」と笑える会話を付け加えています。
この『曲がった男』はいかにも「推理小説」という感じではなく、「小品」の部類に入るとは思いますが、原作もドラマも、私にはとても印象に残る作品です。
純愛と勧善懲悪のミックスが、インドやイギリスの軍隊や社会を背景に描かれているのか、印象深いのでしょう。

「シャーロック・ホームズ全集」と作者についてのページ
『シャーロック・ホームズの思い出(下)』の説明ページもどうぞ、ご覧ください。
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この偕成社版は、一般向けの文章を子どもに読みやすいように、平易な文章にしたシリーズです。中学生以上の方なら、一般向けの本の方をお勧めします。
『シャーロック・ホームズの思い出(下)』は、偕成社版の「シャーロック・ホームズ全集」の8冊目です。ホームズシリーズの2番目の短編集です。
『シャーロック・ホームズの思い出』には、11編が収録されていますが、この偕成社版は、子ども向けなので、ページ数の関係か、上下巻に分冊されています。
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この本の表紙画像は、出版社の許可をいただいて、私の本サイトの『シャーロック・ホームズの思い出(下)』の説明ページに掲載しています。

嬉しいことに、この下巻に収録されている作品『まがった男』『入院患者』『ギリシア語通訳』『最後の事件』は、全部ジェレミー・ブレット主演の「シャーロック・ホームズの冒険」シリーズではドラマ化されています。
この下巻に収録されている作品のうち、今日は『まがった男』について。

この『まがった男』は、インドでの過去の事件が絡みます。ホームズの物語は、イギリスがインドを植民地にしていた頃に描かれましたから、しょっちゅう物語にインドが出てきます。この作品は推理小説ではありますが、実は純愛物語と言ってよいかと思います。
長い歳月が過ぎて、全く相手の生死さえ不明でも、心の奥底に存在する強い気持ち。
それがビクトリア朝のイギリスの軍隊や軍人の家庭、インドの風物などを通して描かれます。

それともうひとつ、「因果応報」というか、アガサ・クリスティの『ポワロのクリスマス』に出てきたヨーロッパのことわざ「神のヒキウスはまわるのがのろいが・・・(どんな小さな粒もひきのがさない)」(ハヤカワ・ミステリ文庫 村上啓夫訳)を連想させるもの。
不正な手段で利益を得ようと行動して、その対象物を得ても、人間は良心の呵責に悩まされる、ということを強く感じるストーリーです。
中国の後漢書の故事からという「天知る、地知る、我知る、人知る」ということわざも思い出します。
その相手は死んでしまった(と思われる)し、自分が悪いことをしたのは誰にも知られていないが、自分自身がよく知っている。そしてそれは、いつか露見する、という勧善懲悪の物語でもあると思います。

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ジェレミー・ブレット主演でドラマ化された『曲がった男』は、おおむね原作に忠実な作りです。
原作では、事件の半分ほどをホームズがひとりで調べて、後半、ワトスンと行動を共にすることになっているのが、ドラマでは最初からワトスンと一緒、ということや、事件の発端となる出会いが原作では「道で」なのに、ドラマでは「ボランティア会場で」に変更されている位です。
その代わりというか、原作では割合とあっさり描写されていた、ある人物の「罪悪感」については読者により理解しやすいような形で映像化されています。
ドラマで私が気に入っているのは、女中のジェーンのキリッとした性格描写。ホームズの誘導尋問にひっかからずに、てきぱきと芯の通った受け答え。
そして事件が起きたバークレー邸で、暖炉を背に立ったホームズのスタイルの良いこと。独特の右手の人差し指を唇に当てる仕草もかっこいい。
悲劇の現場となった、白い壁のバークレー邸と緑の芝生のコントラストのきれいなこと。
もちろん現場を調べるホームズの様子もこれまたかっこいい。
それから「曲がった男」の受けた仕打ちを知ったときのホームズとワトスンの、驚きと同情と(加害者への)嫌悪が入り混じったような表情。
事件当夜の雷を効果的に使ったシーン。
これはちょっと陳腐では、という意見の方もいるようですが、私には、被害者の恨みをきっちり表現しているようで、なかなか良かったと思えました。
(こちらのサイト221b Baker Street の管理人さんは、このシーンについて『B級ホラー?』と表現されてます。こちらのサイトではネタバレがありますので、参照の場合はそのつもりで。)
ラストには、原作をちょっとひねって、「くすっ」と笑える会話を付け加えています。
この『曲がった男』はいかにも「推理小説」という感じではなく、「小品」の部類に入るとは思いますが、原作もドラマも、私にはとても印象に残る作品です。
純愛と勧善懲悪のミックスが、インドやイギリスの軍隊や社会を背景に描かれているのか、印象深いのでしょう。

「シャーロック・ホームズ全集」と作者についてのページ
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